ALASKA
1994年から2019年まで15回にわたりアラスカで撮影してきたベストショットの数々を一冊にまとめました。これから地球がどう変わっていくにしろ、僕らは未来永劫滑り続けられる訳ではありません。ただ地球上にこんなところがあるのだということを記録にとどめておきたいそれを見てもらいたい。そういう想いシャッターを切りました。
文 樋貝吉郎
スノーボーダーなら一度は憧れるアラスカ。信頼できる仲間とキャンピングカーで寝泊まりし、運が良ければオーロラの洗礼を浴びる。ブルー、グリーン、パープルと変幻自在に変わる偉大な存在に感喜し、トリップの成功を祈る。セイナロッジでアラスカンアンバーを飲み、ロックバンドの演奏に聞き惚れ、曇りの日はなじみのマーケットへ。太陽が現れいよいよヘリに乗り込む。トランシーバーで最終確認し準備が整う。HESTRAを外しシャッターボタンに指をおく。緩和と緊張の世界。
そう、ここはALASKA。静寂のなか命がけで迫ってくるスノーボーダーひとりひとりと、僕のアラスカがここにある。
カバーの内側はこんな感じです
1994 1995 1997 1998
1999 2000 2001 2002
2003 2004 2005 2006
2007 2015 2019
刻まれたライディングの結晶
自分以上の恐怖に打ち勝って斜面に飛び込み大きなトラックを描く滑り手をしっかりと記録する。ボトムに降りてくると、ライダーたちと生還の喜びを分かち合う。これほど“生”を実感することはない。
Taro Tamai Gaku Nagata Osamu Usami Shawn Farmer and dudes AWA Valdez 1994
Taro Tamai 1994
Mike Basich 1995
Craig Kelly 1997
Jim Rippey 1997
Johan Olofsson Dave Swanwick 1998
Noah Salasnek 1997
Doug Coombs 1997
Mike Hatchett Doug Coombs Ari Marcopoulos Johan Olofsson Jim Rippey Lisa Wax Victoria Jealouse Willy Aaron Sedway Noah Salasnek Nate Cole Tsaina Lodge TB6,7 VHSG Valdez 1998
Tomomi Kuwahara H2O Valdez 1997
Taro Tamai Valdez 1998
Jeremy Nobis Jeremy Jones Tommy Moe Brian Savard Todd Jones TGR Skagway 1999
Toshiya Seyama Kenji Ishikawa Kohei Amemiya Makoto Takagaki Kenji Ishikawa Alyeska Kohei Amemiya Chugach 1998 Yuu Nishiyama Masashi Nishina Points North Cordova 2000
Katsuro Taguchi Valdez 2002
Satoshi Tsukahara Masaki Sekiguchi Kentaro Izumi Hideyuki Nagashima Takayuki Tsujii Tomoki Takaku Daisuke Sasaki Tadahiro Yamaki icon2 Skookum Glacier Chugach 2002
Takeshi Kodama Paika Glacier Denali 2004 Tomoki Takaku Skookum Glacier 2002 Kenji Kono Valdez 2007 Shingo Takahashi Chugach 2002
Shin Biyajima 2015
Kazushi Yamauchi Hayato Doi 2006 Tomomi Kuwahara Noriko Fukushima Yoko Sasaki Kristen Kremer Yuusuke Yamauchi Munehiro Horio VHSG Valdez 2007
Yuta Kiyohara Katsuyuki Kono Fly Drake Haines Takaoki Hashimoto Drake Olson 2015
Jamie Lynn Bryan Iguchi ASG 2015
Yuta Kiyohara Mr.Skagway Kazuhiro Kokubo Haines 2015
Shin Biyajima Valdez 2015
Northern Lights One Love 2015
Daisuke Sasaki Haines 2015
Shin Biyajima Tomoki Takaku Jason Champion Yasu Onoguchi MIND ASG Valdez 2019
Daisuke Sasaki Takaoki Hashimoto icon8 Haines 2015
Slide Sheet
JP Martin Gaku Nagata 1994
Tomoko Okazaki 1995
Shuichi Hirayama 1994
Nick Perata 1994
Akio Endo 1995
Kei Ishii Hikari Suzuki Toshiya Seyama 1997
Shuji Kajiura Yuu Nishiyama Masashi Nishina 2001
Hayato Doi Ken Shibuya 2006
Masaru Yamashita 1995
Cinematographers
Taro Tamai AURA Jon Freeman Creatures of Habit Mike Hatchett Tom Day TB6,7 Standard Films Steve Jones Todd Jones Teton Gravity Research Masaki Sekiguchi icon ebis films Molly YUKIFURUTOKINI IST Pictures Hiroyuki Yamada END OF THE LINE Paradox films
Magazines
SNOWing SNOWSTYLE FREERUN Transworld SNOWboarding SNOWBOARDER FREERIDE EX Fall Line The Last Frontier DIGGN'MAGAZINE
渡航
1994 1995 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2015 2019
協賛
241 DONT PANIC FULLMARKS
GENTEM STICK green clothing
MSR PATAGONIA THE NORTH FACE
玉井太朗
高久智基
美谷島慎
田口勝朗
佐々木大輔
児玉毅
髙橋信吾
雨宮康平
石川健二
桑原(中牟田)知美
西山 勇
仁科正史
瀬山寿弥
佐々木(三宅)陽子
福島のり子
岡崎友子
堀尾宗弘
河野克幸
河野健児
国母和宏
橋本 貴興
清原勇太
山内一志
土井隼人
澁谷謙
永田学
宇佐美收
石井慶
平山周一
関口雅樹
辻井隆行
永島秀之
塚原聡
山木匡浩
和泉健太郎
Johan Olofsson
Mike Basich
Craig Kelly
Noah Salasnek
Jim Rippey
Jeremy Nobis
Bryan Iguchi
Jamie Lynn
Mike Hatchett
Tommy Moe
Doug Coombs
Victoria Jealouse
Lisa Wax
Nate Cole
JP Martin
Jeremy Jones
Ari Marcopoulos
and more
ALASKA
アラスカ。地球上で最も美しい山々。その存在を知ってから、なんとしても自分の目で見てシャッターを切りたいと思った。
絵に描いたような美しく切り立った山々。その白いフィールドに大きな弧で滑り降りる滑り手たち。ラストフロンティア(最後の開拓地)と呼ばれるだけあって、人間の手が達し切っておらず、可能性を秘めている気がした。その春に日本人のスノーボーダーで初めてアラスカを滑走した玉井太朗さんから『アラスカに行ってみないか』と誘いを受け二つ返事で答えた。とは言っても、前年にフリーライドコンテスト中に起きた大雪崩の瞬間の写真が雑誌やビデオで大きく取り上げられていたせいもあり、かなりの恐怖もあった。それから日本で滑る時もアラスカのイメージでターンをした。大胆ながら絶対に転倒しない滑りが求められた。果たしてそんな付け焼き刃が通用したのだろうか。
ついに4月アラスカ、バルディーズに降り立った。毎朝寝床で今日が人生最後の日になるかもしれないと暗い気持ちで目を覚ました。その年の1994年から始まったイベント”キングオブザヒル”のお祭りの喧騒は怯えの気を紛らわしてくれた。最初の年はガイド無しで自分達だけで滑ることができた。僕らを乗せたパイロットが旋回して空から斜面をチラリとだけ見せ、頂上に下ろし飛び立ってしまうと、自分達だけで判断をして行動しなければならない。カメラマンは一番先にチラ見した斜面に滑り込みライダーを先回りして撮影するのだからどれだけ実力以上の無茶をしていたのだろう。それでも日本でのイメトレの効果はあったようだ。
初めの数年はバルディーズエリアにも誰も滑り降りていない山も残っていてファーストディセントとして最初に滑り降りたグループが名前をつけることが出来た。『ハポネス』はスペイン語の日本人と幸福のハピネスを混ぜた岡崎友子さんの造語だが、近年も『ハピネス』と呼ばれしてメジャーなルートになっているようだ。話は変わるがアラスカの急斜面で、パウダーというのは、実はなかなか出会えないコンディションだそうである。
彫刻刀で切れ目をいれたような縦筋のヒマラヤ襞といった雪面の形状は世界の多くの山で目にすることができるがそれらのフォトジェニックな造形物はライディングに適してはいない。4000メートル以上の標高があるヒマラヤやヨーロッパアルプスのような高山は極度の低温と大陸性気候の乾燥した雪を強烈な風が叩きつけて、柔らかい雪は下に落ち、硬く凍りついているのだ。引き換えアラスカのバルディーズの山々は海に近く標高は1000メートル足らずである。春先の豊富な降雪量と適度に湿度を含む雪は急斜面であっても雪が山にくっ付き、滑り手の夢”スティープ アンド ディープ”を実現させるのだ。また、夏のミッドナイトサン(白夜)になる前の春の時期は夜の10時近くに完全に日が沈むまでの黄色からオレンジ色の光の中を滑ることを長時間堪能できる。緯度が高いと太陽は地平線を並行するように沈んでいくからである。さらに完全に暗くなった夜には、運が良ければ夜空に神秘的な緑色のカーテンのように揺れるオーロラを目にするチャンスもある。それもアラスカの魅力だ。
何年通っても恐怖心が完全に無くなることはないのであるが、ヘリでも氷河にテントを張るような時も一旦板を履いて斜面に入ると恐怖はどこかに行ってしまうのだから不思議なものである。自分以上の恐怖に打ち勝って斜面に飛び込み大きなトラックを描く滑り手をしっかりと記録する使命に集中するからに違いない。ボトムに降りてくるとライダーたちと生還の喜びを分かち合う。これほど“生”を実感することはない。1994年を皮切りに2019年の間に15回も訪れた。次はいつ行けるだろう。何度訪れても初めて訪れたときの胸の高鳴りと張り詰める緊張は変わらない。
TEXT YOSHIRO HIGAI
ALASKA
ALASKA